石器時代から現代まで

 はちみつ瓶のラベルの絵は、紀元前7000年頃に描かれたスペインのアラーニャ洞窟の壁画の模写です。ハニーハンター、野生はちみつを採取する様子が描かれています。このように人類は古来、食用・薬用・酒作りなどにはちみつを用いてきました。献上品にもなっています。

古代の壁画
はちみつを採取する女性の岩絵。

 古代メソポタミアやエジプトでは、すでに養蜂が始まっており、紀元前2500年のエジプト王の遺跡の壁画に養蜂の様子が描かれていて、すでに産業となっていたようです。ナイル川に浮かべた船に巣箱を積み上げ、岸辺の花の開花に合わせて上流から下流へと移動する養蜂も行われ、オレンジ・クローバー・綿などの蜜を採取し、その重みで船の喫水線が決められた高さまでくると十分な量がとれたことが分かります。古代エジプト時代のパピルスには、「ラー神の涙が地上に落ちミツバチに姿を変え巣をつくり、あらゆる種類の花を忙しく訪れた。そして蜜蝋がつくりだされ、はちみつもラー神の涙から創造されたのだ」と書かれています。

古代の壁画
古代エジプトの養蜂を描いた墳墓の壁画。灰色の巣箱からハチミツのたまった巣を取り出し、蜜を壺に貯蔵している様子。

天然蜂蜜とは、

 無添加・非加熱の蜂蜜ということです。無添加とは、水あめなど糖類その他一切の添加物を加えていないこと。 非加熱とは、製造流通段階で加熱処理をせずビタミンや酵素が生きたままであること。
 一方、ほとんどの輸入蜂蜜は検疫で高加熱殺菌されているので、薬効が失われています。日本の蜂蜜の消費量の90%以上が輸入品です。

はちみつの絵
ピラミッドの壁画に描かれたミツバチと葦を著した象形文字。王位の象徴でした。

 天然蜂蜜は、天然のビタミン剤といわれるほど、多様なビタミンが活性型として配合されており、市販のビタミン剤とは違って、消化器官に負担なくスムーズに体内に吸収されるので少量でも十分に効果があり、スーパーフードの筆頭格になっています。

 また、抗酸化作用・殺菌パワーがあり、紀元前1000年の王の墓から副葬品の蜂蜜瓶が発見され、中身の品質にほとんど変化はなかったというほど、強力な殺菌力をもっています。
 その他、ミネラル・ポリフェノール・必須アミノ酸・有機酸がおおく含まれ、健康や美容に効果が期待されます。

 神の食べ物や薬として大昔から崇められてきたのには、それなりの理由があるのです。

Honey On The Dining Table

 食卓にはちみつを用意して、食べる直前に料理にトッピングしてみると、はちみつの甘味とコクが料理の風味を一層引きたててくれますし、熱に弱い天然ビタミンも壊れずに、はちみつの栄養分すべてを摂取できます。
 テーブルハニー、ぜひお試しください。

深い眠りにあなたを誘う一杯のはちみつ

 脳が円滑に機能するためには睡眠の質が大事で、その質をきめる要素は成長ホルモンの分泌です。初期の深い眠りについたときに成長ホルモンは大量に分泌され、日中に傷ついた細胞や筋肉の修復、そして記憶の整理もしてくれます。寝るまえに天然はちみつをとると、睡眠初期に使われるエネルギー源となり、深い睡眠につかせてくれます。はちみつは虫歯菌・歯周病菌の退治もしてくれますので、安心してお休みいただけます。

アカシアはちみつ

 蜜源はマメ科のハリエンジュ(針槐)。種小名はpseudo acacia。pseudo(ラテン語)の和訳はニセ、英語だとfakeとなり、ニセアカシアと呼ばれています。1873年から街路樹・公園樹、砂防・土止めに植栽、材は器具用等に用いるために北米から日本に輸入がはじまり、各地に移植しました。北海道には薪炭用にたくさん植えられ、やがて野生化し旺盛に繁殖したので、その花は現在では北海道のはちみつの一大蜜源となっています。
 明治期に日本に輸入された当初は、このニセアカシアをアカシアと呼んでいましたが、後に本来のアカシア(ネムノキ亜科アカシア属)の仲間が日本に輸入されるようになり、区別するためにニセアカシアと呼ぶようになりました。今でも混同されることが多いのですが、本来のアカシアの花は放射相称の形状で黄色く、ニセアカシアの白い蝶形花とは全く異なります。ニセアカシアの花からはちみつがとれるのです。それを一般的にはアカシアはちみつと呼んでいます。
 西田佐知子の「アカシアの雨がやむとき」、石原裕次郎の「赤いハンカチ」に歌われるアカシアの花、北原白秋の「この道」に歌われるあかしやの花、松任谷由美の「acacia」などは、ニセアカシアのことです。
 ニセアカシアの花言葉は「慕情」・「優雅」・「頼られる人」。腐りにくく丈夫な木の性質に由来しているそうです。

菩提樹はちみつ

 シナノキ科の木の花を蜜源としています。
 その下で釈迦が瞑想したという菩提樹=インドボダイジュが熱帯産のため、インド仏教が伝来した中国では生育しなかったので、葉の形がハート型で似ていることから、代わりにシナノ木を菩提樹と中国では呼ぶようになりました。日本にはシナノ木(ニホンシナノキ)が自生していて、信濃の語源になったという説があります。シューベルトのピアノ曲「菩提樹」はセイヨウシナノキです。
 はちみつには独特なコクがあります。特に喉の炎症に効果があるといわれています。